食事制限と身体トレーニングの両方を行った場合、体重、体脂肪ともに減りますが、筋肉・骨などの体脂肪を除いた体重は変わらず、インスリン感受性と糖を消費する能力が上がることから太りにくく、糖代謝がうまく働く健康的な身体になります。一方、運動はせず食事制限のみを行った場合、体重は減るものの体脂肪は変わらず、また、筋肉・骨などの除脂肪体重は減り、インスリン感受性まで下がります。つまり、食事制限だけのダイエットでは筋肉だけが落ち、基礎代謝が減って、太りやすい身体になるのです。また、インスリン感受性が下がるため、糖代謝がうまくいかなくなります。
軽めの運動を続けると、筋肉で糖質と脂肪をバランスよく消費し、心臓や肺の機能を高めます。また、インスリンに対する身体の反応がよくなり、エネルギー代謝を促進します。軽めの運動を続けることは、肥満の治療や予防、健康増進に結びつくのです。一方、短時間の強度の高い運動では、脂肪より糖質が消費される割合が高くなり、全力疾走などの最大強度の運動では、ほとんど糖質のみが消費され、脂肪の消費には結びつきません。
肥満者の糖尿病の発症率は、非肥満者の5倍。肥満によって脂肪細胞が肥大化し、細胞のインスリンシグナル伝達系に異常をきたし、インスリン抵抗性を招くのです。このためインスリンの働きが悪くなって血液中の血糖値が上がり、糖尿病の引き金になると考えられています。現在、肥満な人だけでなく、過去に肥満だったことがある人も、糖尿病の発症率が高いことが知られています。特に糖尿病の場合、病気が進行すると十分食べていてもやせてくることがあります。肥満歴があり、生活改善もしないままやせてきたときは要注意です。糖尿病を合併した肥満症は、まず、摂取エネルギーを減らすことで血糖値の改善をはかります。さらに運動療法を加え、インスリン感受性を高め、糖尿病と肥満の双方を改善していきます。
血液中の総コレステロール、中性脂肪や善玉のHDLコレステロールの値をみると、肥満度が10パーセント以下の人に比べ、肥満度30パーセント以上の人では総コレステロール、中性脂肪ともに多くなり、逆に善玉のHDLコレステロールは少なくなります。高脂血症の有病率は、肥満度が増すほど高くなります。肥満による高インスリン血症は、高脂血症を悪化させます。また、内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を誘引します。インスリン抵抗性が強まると、高インスリン血症を招き、肝臓で脂肪が過剰につくられます。その結果、血中のコレステロール値、中性脂肪値が上がり、高脂血症を悪化させるのです。高脂血症を合併した肥満症の治療は、まず食事療法と運動療法で、内臓についた脂肪を減らします。内臓脂肪の減少は中性脂肪と悪玉のLDLコレステロールを減らし、善玉のHDLコレステロールを増やします。また、コレステロールや脂肪が多く含まれる食品を制限し、食物繊維やビタミンC、ビタミンEを多くとるとよいでしょう。
肥満者は適正体重の人に比べ、高血圧になる危険度が3.5倍。なかでも内臓脂肪型肥満は、皮下脂肪型肥満より、高血圧を合併する割合が高いことが知られています。内臓脂肪を減量で減らすと、皮下脂肪を減らした場合より高血圧の改善が認められています。内臓脂肪が蓄積されると、インスリン抵抗性が起きます。インスリン抵抗性が強まるとインスリンが多量に分泌される“高インスリン血症”を招き、腎臓でナトリウム(塩分)が排泄されにくくなります。その結果、血液中の塩分濃度が上がり、血液の絶対量が増えます。心臓からの血液の拍出量も増えるため、高血圧を悪化させるのです。また、高インスリン血症は交感神経の働きを亢進させるため、高血圧を悪化させます。肥満に伴う高血圧は、その60~80パーセントが食事療法で正常になります。基本は1日の摂取総エネルギーを制限し、肥満を解消することですが、その際、塩分管理も行うといいでしょう。








